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映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」感想。実在のヒップホップグループN.W.A.を描いた傑作

ギャングスタ―のイラスト。防止にComptonの文字が

※映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」を、映画館で見た当時の感想です。

この映画はすごかった!147分があっという間。もう1回見に行きたい。

実写の映画だけれど嘘のようなホントの話。実在したヒップホップグループの伝記映画です。  

 

ストレイト・アウタ・コンプトン。あらすじなど

今なお多くのアーティスト、リスナーに影響を与え続けている、西海岸が生んだヒップホップグループ「N.W.A.」のグループ結成から解散、そしてその後を描いた伝記映画。1986年にアメリカ、カリフォルニア州コンプトンで結成された「N.W.A.」は、暴力に走らず、ラップという表現で権力者たちに立ち向かった。理不尽な社会や警察へのメッセージを暴力的なリリック(歌詞)で表現したことから、警察、さらにはFBIからも目をつけられる「世界で最も危険なグループ」へと成りあがっていく。監督は「交渉人」「friday」のF・ゲイリー・グレイ。「N.W.A.」のメンバーだったドクター・ドレー、アイス・キューブ、亡くなったイージー・Eの未亡人トミカ・ライトが製作陣に名を連ね、アイス・キューブ役を実の息子であるオシェア・ジャクソン・Jr.が演じている。
映画.com より引用

最初に告白しておきますと、私はヒップホップは特に好きではありません。どちらかというと苦手なジャンルの音楽です。あまり興味もない。

なのでこの映画の題材になっている、N.W.Aというグループや、アイス・キューブ、イージー・Eといった人物も全く知りませんでした(ドクター・ドレーは少しだけ知ってた)。

ヘッドホンで有名なビーツ・エレクトロニクスのドクター・ドレー(Beats by Dre)がエミネムを見出したっていうのを聞いて「へえ、そうなんだ~」って思ったくらいです。

そんな私でもこの映画はめちゃくちゃ面白かった。すさまじい映画でした。

 

まず映画は主人公格のイージー・Eが麻薬の売人ハウスにて「俺の金をよこせ!」と詰め寄っていくシーンで始まります。

そこに警察がやって来るんですが、装甲車?で売人ハウスをぶち壊してしまうんですね。売人の女なんて吹っ飛ばされてるし。笑えるんだけどやばい。あの女死んでるんじゃ。昔の警察やべえ。 

その後イージー・Eは麻薬売買で得た利益を元にドクタードレーたち仲間とともにルースレス・レコードを立ち上げ、N.W.A.を結成。

ギャングスタ・ラップのアーティスト(ラッパー)として成功していきます。

そしてその後……。筋書きとしてはこれだけなんですが、その過程が圧倒的な熱量をもって描かれています。 

 

コンプトンの日常は地獄のよう

かべに色々な絵が描かれているアメリカのどこかの街中の写真

タイトルにもなっているコンプトンはアメリカ・ロサンゼルスの南に位置する都市で、全米一危険な都市とも言われているとか。

典型的なインナーシティ。そのコンプトンでの日常生活は現代の平和な日本に住んでる私からしたら想像を絶するものです。

通学中ガキんちょがスクールバスの中から隣の車をからかったら、車からギャングが降りてバスに乗り込んでくる。

そしてからかったガキに銃を突きつけ脅しつけます。そんな生活空間です。同じアメリカでも郊外では至極安全な場所で豊かな人達が幸せに過ごしているのに。 

 

そんなコンプトンでは当然警察も異常に厳しくなっています。時代も30年近く前だし黒人への差別もバリバリ。

黒人が集団でたむろしているだけで、両手を頭の後ろで組ませて地面にうつ伏せにさせてしまう。これは黒人の人達には屈辱以外のなんでもないでしょう。

特に思春期の子ども達にとっては。警察も油断したら殺されてしまいかねないから、厳しくなってしまうのも仕方ないのかもしれませんが。 

 

こういった日常で溜まりに溜まった屈辱、鬱屈、不満などの抑圧された感情をイージー・Eはギャングスタ・ラップとして表現します。

その歌詞はコンプトンの現実をそのまま描いたもので、当然放送コードにもひっかかるような過激なものになっています。

「ファック・ザ・ポリス」なんて曲、タイトルからして逝っちゃってますよね。彼らの背景を考えると現実をそのまま表現すると過激になってしまっているだけなのですが。 

 

ストレイト・アウタ・コンプトン。登場人物ごとの感想

そんな地獄のようなコンプトンで出会った男達。この映画はその男達の友情を描く物語とも言える内容になっています。

以下では各キャラクターについて語って見ます。ネタバレ全開ですので注意。

コンサートの写真

イージー・E(ジェイソン・ミッチェル)

バスの中で歌詞を書いていたり、最初はちょっと冴えない内向的な男の子に見えた(それでも麻薬の売買とかしてるんだが)のですが、だんだんと内に秘めた熱さ、真面目さが見えてきます。 

「お前がラップやればいいんじゃね?」と言われて重い腰をあげてみるものの、ど素人でめっちゃ下手。仲間に笑われて不機嫌になったりもします。

ここでは映画館でも笑いが起こっていました。そんなイージー・Eがギャングスタ・ラップのゴッドファーザーと呼ばれるようになるなんて、世の中分からないもんです。 

 

デトロイトのツアーで警察から「ファック・ザ・ポリス」を歌うなと脅された時の彼は格好良かった。

仲間達がためらう中、会場に警察が大勢来てると知っていてそれでも「ファック・ザ・ポリス」を歌い上げる。

結果として捕まってしまう訳だけれども後悔はない。その後の記者会見での対応も痺れました。「俺たちはコンプトンの現実をそのまま歌詞にしてるだけだ」。

彼らにとっては本当にそうなんですね。エリートの白人記者様にとってはまったく理解しがたいのでしょうが。 

 

N.W.A.のメンバーの中で一番最後までマネージャー(プロモーターかな)のジェリーを信用し続けたのも彼でした。

ジェリーが俺たちを世に出してくれた。ジェリーがいなければ俺たちは……。恩を仇で返したくないという気持ちがあったんでしょう。

彼もジェリーを疑ってはいたのでしょうが。信義に厚いイージーの姿は魅力的でした。 

アイス・キューブやドクター・ドレーがN.W.A.を脱退して各自で大成功を収めていくなか段々と落ちぶれていくイージーの姿には悲しくなりました。

元から女好きだった彼ですが、そういったストレスからさらに女に走りまくったのかなあ。それが悲劇的な結末に繋がってしまいます。 

 

ドクター・ドレー(コーリー・ホーキンス)

この人も最初は情けない感じに描かれていましたね。実家に寄生してDJやってるとか。稼ぎは50ドルだよ!

それが怖いママンに家を追い出され、仲間の家に転がり込み、イージー・E達と出会っていく。人生は縁です。

実家から出る所まででは弟も大人しい人物のように描かれていたんですよね。あとからブチ切れやすい人物と分かってきますが。 

ドクター・ドレーはアルバム「The Chronic」や「2001」が500万、700万枚以上売れているのをみても、音楽的な才能に溢れていたのは間違いないでしょう。 

 

映画では音楽的才能に溢れた面よりも家族思いの面が印象に残っています。ママンに家を追い出されても特に恨まず。

弟に「バカなことはするなよ」と釘を刺して出て行きます。その後も母親や弟を気にかける描写がところどころに挟まれます。

ジェリーが怪しいことにも気付いていながら、母に仕送りをしなければならないから、アイス・キューブが抜けた時にも彼はN.W.A.を脱退しませんでした。 

弟に対しても「バカなことをしなければマイアミに呼んでやる」とずっと気にかけていた様子です。

その弟がバカな喧嘩で死んでしまった時に「もっと早くこっちに呼んでやれば弟は死ななかった」と悲しみにくれるドレーの姿はとても印象的でした。「俺たちは兄弟だ」となぐさめるイージーの姿も。 

 

その後はN.W.A.を脱退してシュグ・ナイトと共に立ち上げたデス・ロウ・レーベルで大ヒットをあげますが、「俺は自分の経営者になりたい。もう縛られたくない」と言ってデス・ロウ・レーベルを抜けてアフターマスを立ち上げます。

デス・ロウ・レーベルを抜けるとシュグ・ナイトに宣言するときの彼は格好良かった。シュグ・ナイトって超怖いんですよ。元ギャングってこともあってド迫力。黒い噂の絶えない人物。イージー・Eもボコボコにされている。

その彼に一歩もひかない。音源とかも全部シュグにくれてやる。そういって去っていくドレーは超クールでした。 

 

アイス・キューブ(オシェア・ジャクソン・Jr.)

この人は終始に渡って理知的な印象……と思いきや。 

マネージャーのジェリーを疑い始めたのも彼が最初でした。半分以上の曲の歌詞を彼が作ってるのに金の分配が不公平だ。この契約はおかしいんじゃないか。

俺たちはハンバーガーを食べてるのにイージーとジェリーはロブスターかよ、豪華なブランチだな! と不満轟々。そうして一番最初にキューブはN.W.A.を脱退します。 

 

脱退前にドレーと話して去っていくとき、オンボロな車に乗っていったキューブ。

その彼がソロで大成功を成し遂げる。一枚目が売れたら二枚目を出す約束をしていたのに、レコード会社が約束を破る。稼いでるはずなのに金も渡さない。 

そんなレコード会社の男にぶち切れたキューブは、事務所を破壊し始めます。仲間とともに窓や調度品をガンガンぶち壊していく。

そうしてレコード会社から約束していた金を出させます。今壊したものの代金はその金から引いておけ、と言い残して。 

次にそのレコード会社のシーンになったとき、調度品が一新されていたのには笑いました。

ちなみに会社の物を壊しまくったとき、キューブは古そうなもの、安そうなものを狙って壊していったらしいです。やっぱこの人、理知的だ。 

 

イージーEとは金銭面のいざこざで複雑な感情があったのでしょうが、友情を感じていたのはたしかです

。N.W.A.の再結成にも彼は乗り気でした。久しぶりのイージーとキューブの再会シーンはとても懐かしい感じ。

しかしイージーは病に倒れてしまいます。意識のないイージーを見舞いに来たキューブが発した言葉「イージーの声が聞きたい」は胸に迫ります。 

 

ジェリー・ヘラー(ポール・ジアマッティ)

この人はちょっと割を食ってる気もしますね。自業自得なんですが。 

イージー・E達の才能を見出して世に出したのは間違いなく彼の功績です。

コンプトンなんていう当時の白人様からしたら近寄りたくもない場所から来たイージー・E達。彼らのレコードを聞いて偏見なくその才能を直感したジェリーはよく考えたら相当すごいんじゃないでしょうか。

ジェリーは白人ですよ。どうしたって偏見は持たざるを得ないだろうに。後半でのアレコレでこの辺りの印象が薄れちまってますが、彼がいなければイージー達は世に出ないままだったでしょう。 

 

イージー達がいわれのない理由で警察に尋問され、頭の後ろで手を組まされ地面にうつ伏せにされていた時、ジェリーは真剣に警察に抗議します。

彼らはアーティストなんだ!」この時の彼は心から警察に憤っていた。イージー達をアーティストとして尊敬していたんです。それを黒人ってだけで屈辱的な目に合わせる警察に腹が立ってしょうがなかったんでしょう。 

ジェリーは白人なので、無理やり地面にうつ伏せにされたりはしません。そんな目に合わされるのは黒人だけです。

同じ黒人の警察官も仲間の目があるからか、余計に厳しくイージー達に接します。そんな警察官、いや警察自体をイージー達が激しく憎むのは無理ないことでしょう。 

さて、ここまでジェリーのいいところを書いてきました。でもやっぱこの人うさんくさいですよね。最初から。

契約をする際にも何かと理由をつけて弁護士を同席させない。弁護士は時間を引き延ばして金を余計にぶんどろうとするのが仕事だとかなんとか。

N.W.A.のメンバーが法律に詳しい訳ないですから、うまいこと丸め込むのは簡単だったことでしょう。 

 

ジェリーがイージー達の才能を見出したのはたしかで、イージー達との信頼関係もあった。

でも彼は不正を行い自分に金が多く入ってくるようにしてしまった。なぜそんなことを?

映画の中では金に目が眩んだとしか描写されていませんでしたが、本当にそれだけだったのかな。他にも理由があったのでは。

ジェリーはそこまで金に困っていた訳でもないのに。色々考えてしまいますね。 

 

差別意識もやはりあったようで、アイス・キューブが脱退後ソロで出した曲でユダヤ人批判ととれるような歌詞がありました。

それを聞いたジェリーは「訴えてやる!」と激昂します。激昂するジェリーに対してムカつきつつも(イージー達も批判されていた)平然としているイージー達が対照的。

なぜお前たちは怒らないんだ、とジェリーはイージー達に問いかけますが、イージーはクールに「これはただのバトル・ラップだ。俺たちは音楽でやり返せばいい」と返します。この辺りでジェリーとイージー達の意識の差が浮かび上がってましたね。 

そして最後、ジェリーはイージーからクビを切られてしまいます。不正の証拠の帳簿がたんまりと。もう何をいい訳してもイージーは聞き入れません。悲しいシーン。 

 

シュグ・ナイト(R・マルコス・テイラー)

怖ぇよ! 

ストリートギャングのブラッズと深い関わりがあるとされている人物で、ドクター・ドレーと共にデス・ロウを立ち上げた。

こいつはとにかく怖い。初登場から不穏な空気を漂わせていたが、とにかく妙な迫力があって不気味なやつだった。

実際イージーがドレーのN.W.A.での契約解除を拒んだ時には超脅す。脅しに屈しないとみると暴力。ドレーがデス・ロウを抜ける時にも脅す脅す。ドスが効いててド迫力です。 

この人現実にまだ生きている人物なんですが、2パックやノトーリアス・B.I.G.の殺害事件への関与してるとかの噂もあって、とにかくこわい人物です。
 

 

その他(M.C.レン、DJイェラ、トミカなど)

N.W.A.の他のメンバー、M.C.レン、DJイェラ、アラビアン・プリンス(この人映画に出てた?)らは印象が薄いですね。

何かやってたっけこの人達? もちろん一緒にツアーしたり話したりしてたのは覚えてるんですけど、これといったエピソードが思い出せないんだよなあ。 

トミカはイージー・Eのグルーピーで恋人なんですが、いつの間にか居た、っていう感じが強いです。出会いのシーンとかも全然覚えてない。

濡れ濡れパーティーとかで出会ったんでしょうか。ああいう乱交パーティーって実際あるんですねえ。参加したいとは思わないけど。怖いし。 

他にはドクター・ドレーの恋人っぽい白人さんも思わせぶりだったけど何にもなかったな。名前も忘れてしまった。

やはりこの物語はイージー・E、ドクター・ドレー、アイス・キューブの三人が中心のお話ですね。 

 

まとめ

過激な暴力描写、ドラッグ、セックス&バイオレンス、と書いてしまうとありふれた映画のように思えてしまいますが、とんでもないです。

表にはあがってこないアメリカ社会・コンプトンの現実、その中で生きる男達の友情、コンプトンの現実を歌詞にして世界に発信しスターダムを登っていく過程、そしてそれから、と素晴らしく面白い傑作映画でした。 

現代の日本で生きている私達からすると実感するのは難しいのですが、この映画で描かれているのもまたアメリカ社会の現実なんですよね。

きらびやかなことばかりじゃない。将来日本にもここまでの貧困がやって来る可能性も充分にあります。基本的には日本は衰退していくでしょうからね……。
 

ま、難しいことを考えなくてもむちゃくちゃに面白い映画なのはたしかです。出てくるキャラクター皆カッコいい!

ライブやツアーのシーンの迫力すさまじい! あんなライブ行ってみたいよ! 

暴力やドラッグ、セックスといった要素に抵抗がある方以外には超おすすめできる映画です。見てよかった! 

 

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